elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年4月3日に閉店しました。以降、地方に暮らしながら農作業と母親の介護に励んでいます。

ママとパトロン

 今年の営業も残すところあと2日という昨日、実にいけ好かない客に来店されてしまいました。

 フリーで入って来た60がらみの男性ですが、ネチネチと粘着質で、少し前に『会員制』の看板を外したのを思いきり後悔してしまいました。
 
 この客、九州で手広く不動産業を営んでいるそうですが、入るなり、

「はあ、これはいい店だ。内装に金がかかっている」
 
 と、ほめてくれた迄は良かったのですが、飲み始めると、

「ママさんのパトロンは、船が好きなんですな?」
 
 と、突拍子もないことを言い出しました。

「えっ、パトロンですか? 私、そういう人はいないんですけども」 

 作り笑顔で対応すると、

「またまたあ。おとぼけですな。まさかママさんお一人でこんな立派な店を始めたわけじゃないでしょう?」

 からんで来ました。

 口調こそ柔らかいものの、ニヤつきながらで、慇懃無礼とはこうしたことを言うのでしょう。
 
 当店は、船室を模した造りになっているのですが、壁やソファ、絨毯に至るまでをマホガニ-色で統一しているので高級に映るらしいのです。

 しかしながらこの店は私がお金をかけて造ったわけではなく居抜きで見つけた、いわば中古物件です。
 
 しかもオーナーが早く売りたいからと格安で譲ってくれました。

 そんないきさつも知らないでこの不動産屋は、

「私も一度くらいはパトロンをやってみたいもんだ」
 
「君たちみたいな若い子にパパと呼ばれてみたいよ」

 とほざきをやめません。
 
 そもそもこの客に限らず、銀座のママにパトロンがいるというのはお定まりのようです。

 私自身うざいほど言われて来ました。

 松本清張の『黒革の手帳』あたりが影響しているのでしょうが、パトロンがいないと女は店を持てないとでも思っているのでしょうか?

 例えばですが、銀座で10坪ほどのスナックを開きたいなら、家賃の相場は25万円くらいですからその10倍の250万円を保証金として用意出来れば、空き物件次第ですが、店舗は借りられます。

 もちろんテナント料のバカ高いビルや新築物件はさておいてですが。

 下手したらマンションの頭金より安いわけで、高級クラブで稼いでいるナンバーワンクラスのホステスだったらお茶の子さいさい、OLだって貯金次第ではママになれるのです。

 パトロンが介入しなければならない理由などどこにもありません。

 無論、パトロン持ちがいないとは否定しませんが、いたとしても一握りな筈です。

 ついつい熱くなってしまいましたが、不愉快極まりないこの不動産屋のせいです。