高額な飲食代
夜の銀座には常軌を逸しているとしか思えない、高額な飲食代を請求するお店があります。
一流クラブとか高級クラブとか呼ばれる類の店ですが、同業者の私からしても呆れ返ることしばしばです。
いつでしたか、『かりそめ天国』というテレビ番組で、ピン芸人が銀座の高級クラブを体験するという企画をやっていました。
その時の飲食代は、90分で30万円を越えていました。
番組MCの有吉さんとマツコさんは、
「銀座だからって取り過ぎじゃないの!?」
「本当だよ。バッカじゃないか?」
顔を見合わせて吠えていました。
内訳は、ヘネシーのVSOPを皮切りに、ピンドンと呼ばれるドンペリのロゼやクリュッグなどの高級シャンパンを抜いていたからですが、それでもやり過ぎです。
そもそも何故このような高額な店がまかり通っているのか?
不景気にも関わらず潰れないのか?
答えは簡単で、需要があるからです。
長年銀座にいるのでよくわかるのですが、とにもかくにも「高級クラブが好き」という客は多いのです。
そうした店は、ソファひとつを取ってもカッシーノだったり、グラスはバカラだったりです。
そうした空間で、黒服に「○○様」とかしずかれながら、そこらの女優顔負けの美女やモデルはだしのお姉ちゃんたちに囲まれて高級な酒をたしなむ…これこそが彼らに取っての「銀座」なのです。
『楽天』の三木谷会長兼社長が、数百万もするワインをポンポン開けて、一晩に二千万円も使われたのがいい例です。
話は変わりますが、この飲食代を巡ってトラブルに巻き込まれたことがありました。
ご紹介で見えた地方のお客様ですが、二時間ほど飲まれて、
「お会計してくれ」
とおっしゃるので、料金を書いたメモをお渡しすると、
「五万円!? 何だ、これは? ぼったくりか!」
表情を変えて激昂されました。
「こんなふざけた料金払えるか! 警察を呼べ、警察を!」
あっけに取られている我々の前で110番されました。
ほどなくして二人の警察官がやって来たのですが、明細書に目を通すと、
「お客さん、この料金は何の問題もありませんよ。むしろ良心的ですよ」
と言ってくれ、怒りの静まらない中年客を連れ出してくれました。
銀座で飲むのは初めてと言いつつ、気前の良い飲み方をされていたので、こちらも甘えてしまったのですが、それにしても警察に介入されたのは初めてのことで大ショックでした。
高級クラブ並みの料金でガタガタ言われるならまだしも、思い出すと今だにくやしくてなりません。