水商売という仕事
地方に嫁いでいる従姉妹から電話があって、
「うちの旦那が来週東京でお得意さんと会うんだけど、あんたの店で飲ませてくれない? 銀座で接待したら喜ばれると思うのよ」
と頼まれたので、
「この時期は無理。忘年会で埋まってるから」
と嘘をついて断りました。
春頃に、
「息子が会社の上司にあんたの店の話したらしいのよ。そしたら連れてけってうるさいらしいのよ」
と言って来た時も最もらしい理由をつけて断りました。
店に入れたくなかったからです。
長い年月私はこの従姉妹に煮え湯を飲まされて来ました。
水商売を毛嫌いしている彼女は、銀座で働き出した私を目の敵にして、親戚が集まる席で私が男衆にビールでも注ごうものなら、
「さすがに注ぎ方がうまいわね」
と、皮肉ったり、
「あんたが一番稼いでるんだからここは持ちなさいよ」
と支払いを押し付けたりしました。
彼女に見下されるまでもなく水商売は偏見の塊です。
銀座といえど同じです。
誰よりも私が知っています。
飲みにいらっしゃるお客様でさえ、
「こんなところで働いているのを親が見たら悲しむよ。早くやめなさい」
とアルバイトの学生に説教しますし、
「俺だったら、自分の彼女を絶対こんなところで働かせない!」
と言い切るサラリーマンもいます。
おかげで自分の仕事にプライドを持てずに来ました。
従姉妹いわく、私は家系の恥さらしだそうです。
それならこんな恥さらしに都合のいい時だけ連絡して来ないで、という話です。
旦那や息子に罪はないけれど、この先何度頼まれても店に入れるつもりはありませんから。