銀座ホステスの「三種の神器」
ひと昔前、
「着物」と「毛皮」、「宝石」のこの三点は銀座ホステスの三種の神器と呼ばれていました。
売れっ子ホステスの象徴とも言われて、それこそホステスたちは競って手に入れようとしたものです。
そうした彼女らを見越して、毛皮屋や呉服店、宝石商などは開店前に毎日のようにやって来て、
「月賦でも、あるとき払いでもかまいませんよ」
と高額な商品を売り付けていました。
宝石はさておいても、あの時代は何だったのか? と思うほど近頃は毛皮も着物も目にするのが少なくなりました。
毛皮は、温暖化や動物愛護などの問題があるでしょうが、今の時代はダサいとも思われているようです。
着物は着付けに時間を取られる上、美容室代もかかります。
私自身毎日着物なのでよくわかりますが、脱いだあとに畳んで片付けるのもひと苦労なものです。
新しく店を始めるママでさえ着ないというのもうなずけます。
それにしても夜の街をあでやかに彩って来た毛皮と着物、この二つがすたれていくのはさみしい気がします。
工藤静香ばりのスレンダーなホステスがロングの毛皮で街を闊歩するのも、岩下志麻ばりのいい女が豪奢な着物で通りをゆくのもその内には見られなくなるかもしれません。
古き良き時代の銀座を知っている私としては消え行くものが多すぎて、郷愁を余儀なくされるばかりです。