『銀座葬』でお別れします
長い年月、お店をやっているのでお客様の訃報も届きます。
少し前も昨年退職されたばかりの建材会社の常務が急死されて、部下だった方が知らせてくれました。
お別れに伺いたいと思うものの、水商売に身を置いている立場で、そうしたことは望めません。
代わりにお亡くなりになられたお客様のキープボトルで水割りを作り、それを好んで座られていたお席のテーブルに上げて供養します。
女性たちにも黙祷してもらいます。
他にお客様がいなかったら、故人の思い出話もします。
当店なりのお別れで『銀座葬』と呼ばせてもらっています。
翌日になったらそのボトルは、ボトル棚の上段に飾ります。
そこには鬼籍に入られたお客様のものばかりが並んでいます。
店内が見渡せる、ナイスビュー席です。
時々、ボトルを照らしている蛍光灯が揺らめくので女性たちは怖がりますが私は、仏様になられた彼らがご自身のボトルを飲みにいらしているのだと思って、ほっこりします。
だから少しも怖くありませんし、とても嬉しいです。