elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年4月3日に閉店しました。以降、地方に暮らしながら農作業と母親の介護に励んでいます。

これからは『年金価格』で飲んでください。

 M電気の部長が定年退職を迎えることになり、挨拶にいらしてくれました。

 開店当初からお世話になっている大恩人です。

「これからは新しいスタートですね。お疲れ様でした」
 
 シャンパンを抜いて、出勤している4人の女性と共に乾杯しました。

 部長は、

「会社を辞めて何がさみしいって、銀座に来れなくなることだよ。交際費が使えなくなるからな」
 
 部長は営業畑にいらしたので、これまでは会社の接待費がふんだんに使えていたのです。

 しょげている部長に、

「大丈夫ですよ、部長。これからは5千円で結構ですからいつでもお気軽にいらして下さい」
 
 提案しました。

「本当かい! 5千円でいいのかい? ボトル代も含めてか!?」

「もちろんですよ。部長にはお世話になったんですから」

「こりゃありがたい! 5千円なら年金でも来れるわ」
 
 仲間も連れて来れると部長はたいそう喜んでくれました。
 
 この部長は銀座が好きすぎて、銀座以外では飲みたくないと豪語するほどの方なのです。

 喜ばれて、私もほっこりしました。
 
 鶴だって恩返しするのですから私だってそうせずにはいられません。
 
 何よりもまた部長にお会いすることが出来ます。

 当店にはこうした『年金価格』で飲まれているお客様が何人かおられます。