愛社精神
すぐ隣がセブンイレブンなので、毎日のように買い物に行きます。
必要なものを買った後、最後は必ず菓子売り場に回ります。
M社のチョコレートを買うためです。
M社には大変お世話になりました。
特に『菓子営業部』にいらしたTさんには足を向けて寝られないほどです。
Tさんの自社の菓子に向けた愛情は半端なく、
「一日一個はうちの菓子買ってくれよ」
だの、
「新商品はコンビニで買ってくれたら嬉しいよ」
だのと、来店されるたび女性たちにセールスしていました。
私にも、
「このチョコはカロリーが低いからメタボのお客さんに出したら喜ばれるよ」
アピールしていました。
ほだされて、いつしか当店のおつまみのほとんどはM社のものに変わってしまいました。
10年ほど前M社は、経営統合してホールディングスを設立、社名も変更して大変容を図りました。
すると新体制のもと、Tさんは引き上げられて執行役員に抜擢されました。
誰もが予想できなかった異例の人事だったそうです。
昨今は、
「愛社精神なんて気持ち悪い。死語。」
「今どきそんなこと言うやついない」
といった風潮らしいです。
会社もブラックだったり、守ってくれなかったりで考え方は人それぞれだと思いますが、でもあそこまで純粋に愛社精神を貫いたTさんは幸せだったと思います。
今は大出世されて偉い椅子に座っています。
当店からは足が遠退きましたが、彼が口癖のように話していた言葉は消えません。
菓子を食べながら喧嘩するやつはいないし、戦争するやつもいない!
菓子は世界に貢献しているんだよ!
本当にそうですね、Tさん。
私はこれからもTさんを思い出しながら御社のお菓子を買い続けますよ。