elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年4月3日に閉店しました。以降、地方に暮らしながら農作業と母親の介護に励んでいます。

初めての募金

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 このところ、母親はテレビの前に釘付けです。

 九州各地に端を発した記録的大雨の被害中継から目が離せないでいるのです。

白内障が進むわよ」

 注意しても聞き入れてくれません。

 おとついの朝、食事の支度をしていると、

「通帳を持って来て」

 と突然言われました。

「どうするの?」

 不思議に思って訊ねると、テレビに映し出されている自衛隊の救助シーンを指差して、

「被災地に寄付するのよ」

 と言いました。

「ええっ?!」

 我が耳を疑ってしまいました。

 この母はこれまでの長い人生でただの一度も寄付をしたことがない女性です。

「大変ね」

「気の毒ね」

 と同情は寄せても、

「支援は国の仕事よ」

「寄付はお金持ちがすればいいのよ」

 あれこれ言ってお金を出すことはしませんでした。 

 昨年の9月9日、母と私は今住んでいるこの地で猛烈な台風に遭いました。

 『ブルーシート』で有名になった『台風15号』です。
 
 思い返しても怖くなります。 

 真夜中だったので恐怖感はより一層で、

「早く過ぎてくれますように!」

 ベッドに並んで横たわりながらひたすら祈っていました。

 夜が明けて外に出てみると、玄関横の板壁は一面剥がされていました。

 ご近所さんも屋根の瓦が飛ばされたり、アンテナがくねったり、玄関戸が傾いたりと被害ざんまいでした。

 水道管がやられたのか、噴水があがっている家もありました。

 この台風を体験して母は人生観が変わったようでした。

 娘の私と暮らし始めて気持ちが落ち着いているせいもあり、被災地に思いが馳せたのだと思います。

 動機はどうあれほめてあげたい気持ちになりました。

「おかあさん、えらいね」

 よしよしと93歳の頭をぽんぽんすると母はまんざらでもない笑みを浮かべました。