決断の時
営業中、同じビルで店をやっている若いママが訪ねて来ました。
深刻そうな面持ちで、
「今週いっぱいで店を閉めることになったので挨拶に伺いました」
ペコリと頭を下げられました。
「それでこれ、八戸名産の『せんべい汁』と『サキイカ』なんですけど良かったらもらってくれませんか?」
両手に下げていた大きな紙袋を手渡してくれました。
お客さんに配るよう、故郷の親御さんが送ってくれてたものだそうです。
彼女が店を始めたのは二年ほど前だったでしょうか?
その時も挨拶に来てくれて、
「銀座に店を持つのが夢だったんです! 頑張ります!」
瞳をきらきらさせていました。
店をやめる理由を訊ねると、やはり新型コロナウイルスの影響でした。
「やめたくはないんですけど、両親が心配してすぐに帰って来いと言うし、友人たちも青森は感染ゼロだから安全だと言ってくれるので…」
このところ、彼女のように店を畳んだり、休業する店が相次いでいます。
テレビもまた連日コロナウイルス一色です。
今日は何人感染したとか、何人亡くなったとか見ていて怖くなります。
このまま女性たちを出勤させていいものか?
お客を受け入れていいものか?
悩んでしまいます。
安全を考えたら早期の決断が必要です。
本音を言えばやめたくない気持ちでいっぱいです。
もう少したてば、特効薬が出来たりして終息するのではないか?
その時、閉店してしまっていたらひどく後悔するのではないか?
あれこれ考えて揺れ動いています。